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レビュー

WINGLESS ANGELS

Wingless Angels
ISLAND JAMAICA 314-524 447-2

「ジョークなのか?」と Simon "Maverick" Buckland さんは Riddim の連載でおっしゃってましたが、こういうアルバムが出ることもワタクシは素直に歓迎したい。

ジャマイカに別荘を持ち、ジャマイカ国籍も持っているらしい Keith Richards のレーベル Mindless Records の第一弾が、このナイヤビンギ・アルバム Wingless Angels

ナイヤビンギのアルバムなんて、もともとそう多くは出ていないですよね。ナイヤビンギは本来、人に聴いて楽しんでもらうためのものではなくて、参加してナンボの集会の演奏なので、商業的にはつらいですね。それを芸術の域に高めた Count Ossie (and Mystic Revelation of Rastafari) が数枚のアルバムを残し、その後を継いで Ras Michael (and Sons of Negus) が積極的にレゲエ等と融合していくつかの作品を発表しているのを除けば、資料的な録音がいくつかあるのみです。

さてそこで今回 Keith Richards が張り切ってプロデュースしたこの Wingless Angels とは一体いかなるものか、大いに興味を持って購入し、聴いてみました。

冒頭の "I Write My Name/Good Morning" は海鳥の鳴き声から始まって、Rockers"Jah No Dead""Satta Masagana" を彷彿とさせます。この演出は、かなり姑息な気もするけど、いや、なかなかニクいっす。

しかし、全体を通してみれば、これはどうも「ただの」ナイヤビンギです。Keith Richardsが弾いている(と思われる)アコースティック・ギターがなかなかいい感じで全体を彩っているけれども、たとえば Count Ossie や Ras Michael らの作品と比べて、この Wingless Angels には音楽的に評価すべき点はあまり無いように思います。まったく無いとは言いませんが... リズム・パターンの構成とかオカズの入り方とか、学ぶところはもちろんあると思うので、そういう意味では非常に録音の質の良い資料がひとつ増えたかな。「ただのナイヤビンギ」ってのも、かえって貴重なものです。

演奏の合間におしゃべりしたり笑い声が上がったりもしてて、非常にいい雰囲気でリラックスして演奏しているのがわかります。このアルバムを一日じゅうかけっぱなしにしててもイヤにはならないし、目をつぶれば、周りでタイコ叩いて楽しそうに合唱してて、その横でKeithがギターを弾いている。Keith Richardsの道楽にまんまと付き合わされている感じがしないでもないですが、それもなかなかいいもんです。

そして、「あの Rolling Stones の Keith Richards がプロデュースするジャマイカのタイコのアンサンブルとは?!」っつーことで、多くの人に興味を持ってもらえるといいなあ。

By Jah Itagaki
1998年2月16日 世界音楽フォーラム (FWM) に寄稿