REGGAE LIFE

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レビュー

[BOOK] Reggae Routes

Kevin O'Brien Chang, Wayne Chen
Temple University Press, USA ISBN 1-56639-629-8

これまでに出版されているジャマイカ音楽史関係の書籍は、 外国人つまりジャマイカ以外の人によって書かれたものが多いのですが、 今年(1998年)2月に出版されたこの本は、 ジャマイカ人の手によってジャマイカ人の視点で書かれたということで、 なかなか高い評価を得ているようです。 著者らは名前から推測するに中国系と思われますが、 ジャマイカ経済のなかで中国系ジャマイカ人の存在は大きく、 ポピュラー音楽ビジネスの分野においてもプロデューサー/レーベルオーナーとしての中国系ジャマイカ人の活躍を無視できないことはご承知のとおり。

この本、どうやらまだ日本には入ってきていないようだったので Amazon.comに注文。 送料をケチって船便で注文したので、6週間を経てやっと届きました。 もしかして今頃はシスコやタワーあたりに並んでいるかもしれませんが未確認です。

さて、まだちゃんと読んでないので言い切ることはできませんが、 ぱらぱらと眺めてみた感触では、 ジャマイカ音楽に関して何かしら特別な「真実」を提示しようというような意図はなく、 数々の資料から拾い集めた事実に著者の考えを冷静に加えてまとめ上げた、 なかなかのいい仕事ではないかなあと思います。 去年(1997年)10月に出版された

Reggae The Rough Guide
Steve Barrow, Peter Dalton
Rough Guides Ltd, England ISBN 1-85828-247-0

や、1994年出版の

THE GUINNESS WHO'S WHO OF REGGAE
Colin Larkin
Guinness Publishing Ltd, England ISBN 0-85112-734-7

と併せて、資料としてぜひ手元に置いておきたい一冊でしょう。 ( この3冊はサイズもほぼ同じなので本棚に並べてもいい感じです :-)

Reggae The Rough Guide は、レゲエのコレクター/解説家として名高い英国人 Steve Barrow 氏らの手により、 メントからラガまで完全に網羅していくらかの解説を加えつつ 1000枚以上の推薦盤を紹介しているもので、 CD/レコード選びの決定版のひとつと言えます。

THE GUINNESS WHO'S WHO OF REGGAE は、 主要なアーティストらのバイオグラフィーと代表アルバムをまとめたもので、 これも私は資料としてとても重宝しています。 ただし、1994年の出版なので、ここ数年間に活躍している新しいアーティストは当然取り上げられていないし、 全体的にややUKに重心が置かれた編集になっているのが少々難点です。 また、細かいところで他の資料と違っている部分がいくらかあって、 まあそれはどちらが正しいのかわからないのですが、どうも100%の信頼は置けません。 いずれにせよ、こちらは残念ながら既に絶版となっているようですが..

で、本題の Reggae Routes の中身ですが、目次はこんな具合になっています。

The History
Introduction
The Heartbeat of a People
Roots Music: Kumina, Quadrille, Mento, Blues and Jazz
Sound System Days and Nights
Rhythm and Blues: Rasta and Oh Carolina
Ska, Ska, Ska
Get Ready for Rocksteady
Do the Reggae
Reggae International: The Harder They Come and Bob Marley
Dub and Roots
Inna the Dancehall
Dancehall Massive
The Pioneers: Count Matchukie and King Stitt
U-Roy the Originator
Riddim Wild
Talking Gleaners
The Sounds
The Sixties
The Seventies
The Eighties
THe Nineties
Appendices
Charts
Notes and References
Biblography
List of Sources
A brief history of Rastafarianism
Index

以上、全246ページ。

これから少しずつ読んでいって、 もし面白いエピソードや興味深い事実等がでてきたら紹介したいと思いますが、 まずは、Millie Small の1964年の大ヒット My Boy Lollipop について興味深い記述がありましたので紹介しておきます。 曰く、この曲でハーモニカを吹いているのは、あの Rod Stewart であるとのこと。 この話については、知ってはいたものの、真偽のほどは確認できないでいたのですが、 この本にもこうして記述されているということは、どうやら本当なのかな? 情報ソースは同じかもしれないですけどね。

ところで、Reggae The Rough Guide も、この Reggae Routes も、 いい本なんだけど、いかんせん英語なので、読むのがちょっと大変なんですよね。 和訳出版されるといいなあ...

ついでに THE GUINNESS WHO'S WHO OF REGGAE も和訳を望みたいけれど、 前述のとおり この本の内容にはちょっぴり難があって、 そのまんま翻訳するんではダメだと思うので、 こっちはちょっと大変かもしれない。

By Jah Itagaki
1998年5月4日 世界音楽フォーラム (FWM) に寄稿
1998年5月6日 加筆修正